アブレーション と は 医療。 カテーテルアブレーション 診療点数と保険金支払いの実際

心房粗動(AFL)のアブレーションラインを覚えるエクササイズだ!

アブレーション と は 医療

アブレーション治療は、心臓の拍動リズムに異常を来して脈拍数が多くなる、「頻脈性不整脈(ひんみゃくせいふせいみゃく)」という病気に対し行われる治療法です。 足の付け根などの太い血管からカテーテルを入れて、心臓内部の不整脈の原因となっている部分を小さく高周波電流で焼き切ります。 手術が成功すれば不整脈の根本的な治療をすることができます。 初めに不整脈という病気について、次にアブレーション治療について説明します。 1 心臓のリズム(刺激伝導系)について 1) 拍動する心臓 図1 血液の流れ 図2 刺激伝達系 心臓は、血液を身体中に送り届けている大事なポンプです。 血液の流れを見てみましょう(図1)。 全身から戻ってきた血液は、大静脈を通り心臓へ入ります。 まず右心房に入り、次に右心室に移動してから心臓を出て、肺へと送り出されます。 そして、肺で要らなくなった二酸化炭素と酸素を交換して心臓に戻ってきます。 肺から戻ってきた血液は左心房に入り、次に左心室に移動してから、全身へと送り出されます。 この血液の流れをつくっているのが心臓の拍動です。 心臓の各部分の筋肉が協調して収縮することで、初めて効率良く血液を全身に送り出すことができるのです。 上手に拍動するために、心臓には 「刺激伝導系」と呼ばれるしくみが備わっています。 2) 刺激伝導系について 刺激伝導系とは、心臓の筋肉の中を走る一方通行の電線のようなものです(図2)。 心臓の筋肉の一種ですが、普通の筋肉とは異なり、筋肉が収縮するための電気信号をすばやく伝え、さらに自ら電気信号を一定の間隔で発生する能力を持っています。 右心房にある 洞結節(どうけっせつ)というところが、刺激伝導系の開始点です。 この洞結節は、何も刺激を受けなくても、一定時間ごとに繰り返し電気信号を発生します。 これが私たちの心臓の脈の速さを決めているのです。 洞結節で発生した電気信号は、心房の筋肉を伝わって 房室結節(ぼうしつけっせつ)へ伝わります。 このとき、心房の筋肉は収縮し、心房の中に溜まっていた血液は心室へと送られます。 電気信号を受け取った房室結節は、わずかな時間だけ待ってから、心室へと向かう ヒス束(そく)へ信号を伝達します。 こうして信号の伝達を少し遅らせることで、心房が収縮しきる前に心室が収縮し始めてしまうことを防ぐことができます。 伝導系は、ヒス束から左脚、右脚の2つに分かれた後、さらに細かく枝分かれ( プルキンエ線維)して、心室の筋肉全体に電気信号を伝えます。 こうして心室の筋肉は収縮し、心室の中に溜まっていた血液を力強く心臓から全身へと送り出すのです。 順番を逆にさかのぼって電気信号が伝わることはありません。 心臓の筋肉の収縮も、血液の通り道と同様に、「心房から心室へ」の順番が正しく守られているのです。 心電図について 心臓の筋肉が収縮するときの電気活動は、心電図を見るとわかります。 簡単な心電図の波形を見てみましょう(右図)。 心電図には「P波」や「QRS波」という波形があります。 このP波は心房の収縮を、QRS波は心室の収縮を表しています。 QRS波がP波より大きいのは、心房よりも次に収縮する心室の方が筋肉の量が多いからです。 正常な心電図では、必ず先にP波(心房の収縮)がきて、一定の時間後にQRS波(心室の収縮)が現れる、この繰り返しになります。 このように、刺激伝導系の働きは心電図から読み取ることができるのです。 2.不整脈の原因 1) 不整脈とは 刺激伝導系が正常に機能しているときは、心臓は規則正しく収縮し、血液を送り出すことができます。 しかし、この刺激伝導系に障害が生じると、心臓の収縮運動が乱れ、脈の間隔や強さの異常となって現れます。 脈が速くなって動悸を感じたり、逆に脈が途切れたり遅くなったりして意識を失うような発作を起こしたりします。 脈に異常を来すとどうなるのでしょうか? たまに起きても、すぐ正常に戻るような不整脈であれば、何も症状が現れない場合もあります。 しかし、異常に脈が多くなり過ぎると、激しい動悸や胸の中の不快感を感じるようになります。 また、心臓が頻繁に収縮する場合には、逆に血液を送り出す効率が下がり、疲労感や息苦しさ、意識が遠くなるようなめまい・ふらつきといった症状が現れます。 また、脈が極端に少なくなることもあり、その場合は疲労感や息切れ、めまいなどが現れ、重症のときには意識を失う発作が起きることもあります。 脈が規則的な間隔を外れて突然出現することもあり、そのときには胸の中の不快感や心臓の痛みを伴うこともあります。 2) 不整脈を起こす原因 不整脈には、不整脈を起こす別の原因がある場合と、別の原因があるのかどうかはっきりしていない場合があります。 心臓自体に病気がある場合、例えば心筋梗塞や心筋症などで、心臓の筋肉が障害を受けていると、刺激伝導系にも障害が生じ、不整脈が現れやすくなります。 心臓以外の病気、例えばホルモンや血液中の電解質イオンや自律神経系活動などのバランスが崩れるような病気の場合、不整脈が合併症として現われることがあります。 心臓はこれらの要因によって心拍数や収縮力の調整を受けているためです。 また、心臓病などの治療のために服用している薬の副作用で不整脈を生じることもあります。 不整脈と診断されて検査を受けても、上記のようなはっきりした別の病気が見つからない場合は、原因として、生まれつき刺激伝導系に異常がある場合や、加齢による刺激伝導系の機能の低下が疑われます。 また、高血圧や喫煙、精神的なストレスなど、心臓に負担をかけるさまざまな要因が複合的に合わさって、不整脈を悪化させているとも考えられています。 3) 不整脈の起こるしくみ(頻脈性不整脈の場合) 図4 リエントリー(副伝導路) 図5 異常自動能 それでは、実際に不整脈が起こるしくみについて、もう少し詳しく見てみましょう。 心臓や刺激伝導系ではどのような異常が起きているのでしょうか? ここでは、アブレーション治療の対象となる頻脈性不整脈の場合を考えてみます。 この場合、刺激伝導系の異常は2つに大別できます。 1 リエントリーとは 正常な刺激伝導系とは別に、電気信号を伝えてしまう第2の伝導路が存在することがあります。 これを副伝導路と呼びます。 副伝導路が存在すると、本来は一方向へ流れるはずの電気信号が副伝導路を通って上流に戻ってきてしまい、いつまでも電気信号がぐるぐる回り続けてしまうことになります。 すると、心臓の筋肉は絶え間なく収縮するように電気信号を受け続け、頻脈性不整脈になってしまうのです。 このような状態をリエントリーと呼びます(図4)。 2 異常自動能とは 洞結節は、特別な刺激を受けなくても、一定の時間ごとに自動的に電気信号を発生します。 この自動能が洞結節以外の部分にできてしまうことがあります。 異常自動能の部位が存在するということは、あたかも命令する指揮官が2人以上いるようなもの、です。 結果的に、心臓の筋肉は2ヶ所以上の場所からそれぞれに発生する電気信号を受け、頻繁に収縮を繰り返し、頻脈性不整脈に陥ります(図5)。 3.不整脈の種類 1) 健康な人でも起こる不整脈と病気の不整脈 不整脈にはさまざまな種類があり、健康な人でも時々は起こる不整脈というものもあります。 自分の脈を注意深く触れてみると、まれに脈が1回だけ欠落したり、本来の間隔ではないタイミングで脈を感じたりすることがありますが、これは健康な人でも起こる不整脈である場合がほとんどです。 心臓の収縮のリズムがおかしくなると、心室に十分な量の血液を溜めないうちに収縮しなくてはならなくなるため、血圧を急速に高めることができず、心臓は収縮していても脈が欠けたように感じるのです。 このように、不整脈が存在していても問題がないか、あるいはその後の生活の中で新たな症状が生じてこない限り、様子を見ていればいいだけの場合も多くあります。 もし、医師から不整脈と診断された場合は、不整脈という言葉に慌てることなく、どの程度心配しなくてはならない不整脈なのか、よく説明を受けて納得されることが大事になります。 不整脈の種類によって、症状の現れ方や危険度、適切な治療の方法が異なってきます。 2) 頻脈性不整脈と徐脈性不整脈 不整脈が起きた結果として、「脈が速くなる」、「脈が遅くなる」という2つに分けられます。 安静時でも1分間当たり100回以上と脈拍数が異常に多くなり、動悸を感じたり、意識が遠くなるような症状が現れる不整脈を 「頻脈性不整脈(ひんみゃくせいふせいみゃく)」といいます。 逆に、脈拍数が1分間に50回以下と少なくなり、意識を失うような症状が現れる不整脈を 「徐脈性不整脈(じょみゃくせい ふせいみゃく)」といいます。 頻脈性不整脈は、刺激伝導系に余分な電気信号の発生源や伝達路ができてしまうことが原因です。 頻脈性不整脈はアブレーション治療の対象となります。 逆に、徐脈性不整脈は刺激伝導系の働きが落ちていることが原因なので、ペースメーカーを装着し、外部から人工的に心臓の電気信号を補う治療となります。 3) 上室性不整脈と心室性不整脈 刺激伝導系の異常が起きている場所に応じて、2つに分類する方法があります。 問題となっている異常の場所が心室よりも上、すなわち心房の筋肉や刺激伝導系の洞結節・房室結節にある場合を 「上室性不整脈(じょうしつせいふせいみゃく)」といいます。 心室の筋肉や刺激伝導系のヒス束・左脚・右脚などにある場合には 「心室性不整脈(しんしつせい ふせいみゃく)」といいます。 アブレーション治療の対象となる頻脈性不整脈の場合では、一般に上室性不整脈の方が異常部位がわかりやすいので、アブレーション治療の効果が期待できます。 (参照)。 4.アブレーション治療とは カテーテルの参考写真 図6 カテーテルの挿入場所 アブレーション(ablation)とは、「取り除くこと、切除すること」という意味です。 医学的には、カテーテルの先から高周波電流を流して、接している生体組織を小さく焼き切ることを意味します。 このことを専門用語では、 電気焼灼(でんきしょうしゃく)と呼びます。 既に述べたように、頻脈性不整脈の原因は、余分なリエントリー回路や異常自動能を有する部位が存在するためです。 抗不整脈薬という種類の薬でこれらの異常な電気活動を抑制することもできますが、異常な部位そのものを取り去るわけではないので、根本的な治療とは言えません。 以前は手術で胸を開き、直接心臓を操作して異常な部分を除去していました。 しかし、大手術になるため、患者さんの受ける負担はとても大きなものでした。 そこで、胸を切らなくてもよい、アブレーション治療というものが開発されました。 初めて実際の治療に用いられたのは1982年、アメリカでのことです。 その後、日本でも急速に普及してきました。 アブレーション治療の効果が高い不整脈に対して、経験を積んだ医療チームが施行した場合、成功率は9割を超えると言われ、現在では効果的な治療法として定着したと言っても過言ではありません。 アブレーション治療では、まず専用のカテーテル(写真)を、主に足の付け根にある太い血管(大腿静脈ないし大腿動脈)から入れ、そのカテーテルの先をレントゲン撮影で透視しながら心臓まで到達させます(図6)。 カテーテルの先には心電図を計測するための電極がついていて、それで心臓の内壁に接触させながら心電図を計測します。 この計測によって、今カテーテルが接している部分が、副伝導路などの異常な部位であるかどうかがわかります。 この異常な部分を探す作業のことを「マッピング」と呼びます。 異常な部分があることがわかったら、次にカテーテルの先の電極から高周波電流を流します。 強い電流によって、カテーテルの先に触れているわずかな領域の心臓組織だけが電気的に焼かれて、細胞は死滅します。 1回の焼灼あたり、電流を流す時間は1分以内、焼灼範囲は直径、深さとも5mm程度です。 実際にアブレーション治療を受けると胸の中で熱さを感じますが、カテーテルの先には温度センサーがついていて、高温になり過ぎる前に電流を遮断しますので、必要のない部分まで焼灼してしまうことはありません。 異常な部位をすべて焼灼できた、もしくは異常な電気信号伝達を防ぐ焼灼ができたと思われるまで、焼灼を何度か繰り返すこともあります。 また、1回の治療では異常な部位を完全に焼灼できなかった場合、後日再びアブレーション治療を行うこともあります。 当院では、カテーテルは主に太ももの付け根の大腿静脈から入れますが、場合によっては肘静脈もしくは内頸静脈から入れることもあります。 全体の手術時間は3~6時間ですが、個人によって差があります。 局所麻酔で施術可能です。 図7 アブレーション治療 5.アブレーション治療の対象となる不整脈 アブレーション治療の対象となるのは頻脈性不整脈ですが、適用しやすく治りやすい場合と、適用しにくい場合があります。 その違いを見てみましょう。 1) 上室性の頻脈性不整脈 1 発作性上室性頻拍(ほっさせいじょうしつせいひんぱく:Paroxysmal SupraVentricular Tachycardia, PSVT) 突然発作的に生じ、心室よりも上の心房や房室結節の領域に原因のある頻脈性不整脈です。 原因となる部位によって、さらに2つに分けられます。 房室回帰性頻拍(ぼうしつかいきせいひんぱく:AtrioVentricular Reentrant Tachycardia, AVRT:WPW症候群) この病気のしくみを発見した3人の名前の頭文字をとって、 WPW症候群とも呼ばれます。 房室結節やヒス束以外に、心室と心房とを結ぶ副伝導路があるために、一度心室へ伝わった電気信号が再び心房へ戻ってきてしまう病気です。 電気信号が閉じた伝達経路をループ状に回り続けるために、心房と心室が絶え間なく電気信号を伝え合い、頻脈性不整脈に陥ります。 房室結節回帰性頻拍(ぼうしつけっせつかいきせいひんぱく:AtrioVentricular Nodal Reentrant Tachycardia, AVNRT) この病気では副伝導路は存在しませんが、1つの房室結節の内部で電気信号の伝わる速さに差があるために、速い経路と遅い経路でループ状の電気信号の伝導路を形成するものです。 電気信号が房室結節内を回り続けて心房と心室を交互に刺激するため、やはり頻脈性不整脈に陥ります。 房室回帰性頻拍も房室結節回帰性頻拍も、原因となる部分がはっきりしており、領域も限られているため、アブレーション治療が最も有効な不整脈であると言えます。 2 心房粗動(しんぼうそどう) 心房の筋肉が毎分250~400回も収縮する状態の不整脈のことで、多くの場合は右心房を円形に電気信号が回り続ける異常な電気活動によるものです。 心房が収縮する電気信号のうち、心室に伝えられるのはこのうちの何分の1かだけなので、実際の脈拍数が毎分250回になったりすることはありません。 心房粗動もアブレーション治療が有効で、この異常な円形の伝達経路のどこかを断絶するように焼灼します。 3 心房頻拍(しんぼうひんぱく) 心房のどこかに異常自動能を有する部分が存在するために、上室性頻拍が生じるものです。 その異常な部位の数が少なく、位置を特定できれば、アブレーション治療によって完治する可能性が高くなります。 4 心房細動(しんぼうさいどう) 心房が痙攣したようになり、血液を心室へ送り出す心房としての役割を全く果たせなくなる病気です。 心房内で無秩序な電気信号が多発している状態と考えられています。 60才以上で人口の6~7%の高齢者に見られる病気で、心臓のポンプ機能には余り影響しないため、短期的には強い症状が現れることはありません。 しかし、心房細動が長期間続くと、心房の中で滞留した血液が凝固して血栓となり、それが他の臓器の動脈を塞いで血栓塞栓症、例えば脳梗塞や肺塞栓などを引き起こすことがあります。 また、非常にまれに心房細動の異常な電気信号活動が心室まで伝わり、心室頻拍に移行することもあります。 以前は、原因となる部位を特定しにくいため、アブレーションによる治療は無効だと考えられてきました。 しかし、近年、左心房-肺静脈接合部の異常自動能がその原因の90%を占めることが明らかになり、薬物療法などと組み合わせたアブレーション治療が行われるようになってきています。 2) 心室性の頻脈性不整脈 1 心室頻拍(しんしつひんぱく) 心室は最終的に心臓から血液を送り出す働きをしています。 そのため、長時間にわたってそのポンプ機能が障害されると、命にかかわる危険な状態に陥ります。 心室頻拍もそうした危険な不整脈の1つです。 原因となる別の病気などがはっきりしない「特発性心室頻拍」と、心筋梗塞や心筋症などの心臓病に合併する「二次性心室頻拍」とに分けられます。 特発性心室頻拍では、原因となる副伝導路もしくは異常自動能を有する部位の主なパターンが明らかにされており、アブレーションによる治療が有効です。 二次性心室頻拍は、心筋梗塞などで障害を受けた心臓の筋肉の周囲に生じるループ状の異常な電気信号伝達によるものと考えられていますが、その経路は症例によってさまざまな違いがあり、アブレーション治療が難しい不整脈の1つです。 薬物療法及び植え込み型除細動器(ICD)などと併用することなどで、有効なアブレーション治療の方法が試みられています。 3) 治療の対象にならない場合 アブレーション治療の対象となる不整脈について述べてきましたが、逆に不整脈であってもアブレーション治療を行うべきではない場合もあります。 例えば、急性の感染症にかかっている場合には、アブレーション治療は行いません。 また、重症の心不全や出血しやすく血が止まりにくい病気の場合には、アブレーション治療を行うべきかどうか慎重に判断します。 6.アブレーション治療の利点と合併症 1) アブレーション治療の利点 アブレーション治療の利点は次のようなことが挙げられます。 開胸手術をする必要がないので、治療を受ける患者さんへの身体の負担が軽い。 心臓内で原因となる部分をマッピングによってはっきり決定することができるので、手術が成功すれば根本的な治療となる。 長期間にわたって薬を飲み続けたり、頻繁に通院する必要がなくなる。 どちらも、患者さんの生活の質(QOL)を高める上で大きな利点となります。 2) 合併症 1 手術中の外傷に起因する合併症 カテーテルの先端を血管から通して心臓内まで慎重に送り治療を行うわけですが、カテーテルを通す途中で周囲の組織を傷つけてしまう可能性があります。 止血不良、内出血 カテーテルを血管(主に大腿静脈や内頸静脈などの太い静脈)に挿入するとき、あるいはカテーテルを抜いた後、そこからの出血がなかなか止まらないことがあります。 カテーテルを抜いた後はその部分をしばらく圧迫して止血します。 出血が止まりにくいと血管の周囲に血液が漏れ出し、内出血となることがあります。 直後は痛みも伴い、青紫色の斑が残りますが、時間が経てば自然に吸収されて消えていきます。 血管損傷 カテーテルを血管内に挿入し、心臓へ向かって進める間に、血管の壁を傷つけてしまうことがあります。 軽い傷ならば自然に治りますが、放置しておいては治らないような血管の損傷が生じることがあります。 大腿動脈などの太い動脈にカテーテルを刺したときに生じやすく、血管の壁が二層に裂けて、その間に血液が溜り瘤(こぶ)状に膨らむ仮性動脈瘤や、血管に大きな傷をつけた結果、動脈と静脈が直接つながってしまう外傷性動静脈瘻(ろう)などがその例です。 この場合、手術により治す必要があります。 心臓穿孔 X線による透視を行い、カテーテルの位置を確認しながら心臓の内部で慎重に作業を行いますが、まれにカテーテルの先端が心臓の壁を傷つけてしまうことがあります。 このことを心臓穿孔(せんこう)といいます。 心臓から出血が起こり、血液が心臓の周囲に溜まることがあります。 心臓は心膜という丈夫な膜で包まれているので、出血が続くと膜の中に血液が充満し、心臓を周囲から圧迫してしまいます。 この状態を血液による心タンポナーデと呼びます。 心臓は周囲から圧力を受け、十分に拡張することができなくなり、血液を送り出すポンプ機能が低下し、心不全に陥ってしまうため、心膜の中に管を入れ、血液を流し出す必要があります。 房室ブロック 心臓内のカテーテルが正常な刺激伝導系を傷つけると、新たな不整脈の原因となります。 特に、刺激伝導系を傷つけた結果、心房から心室への電気信号の伝達が障害されると、房室ブロックと呼ばれる徐脈性不整脈を引き起こします。 自然に回復することがほとんどですが、回復しない場合、人工ペースメーカーの挿入が必要になることがあります。 気胸 内頸静脈など肺に近い位置の血管にカテーテルを入れる場合、肺を覆っている胸膜を傷つけてしまい、胸腔に外部の空気が入り込んでしまうことがあります。 これが気胸です。 気胸になると、息を吸っても肺が十分に膨まず、息苦しさを感じるようになります。 対処として、胸のわき腹あたりにチューブを刺し、胸腔にたまった空気を外へ排出します。 2 直接的外傷によらない合併症• 不整脈の誘発 アブレーションによって治療すべき不整脈が手術前、手術中に頻発し、さらには別の不整脈にまで進展することがあります。 これは、原因部位を特定するマッピングを容易にするため、あえて不整脈を抑える薬を手術前から中断しているためです。 また、手術を受ける心理的な緊張も不整脈の出現を促進しているものと思われます。 当然のことながら、治療を行う医療スタッフもそのことを十分心得て手術に臨んでおり、対策も万全に整えています。 手術中の不整脈に関しては心配の必要はありません。 手術前に動悸などの不整脈症状に気がついたら、念のため医療スタッフにお知らせください。 血栓塞栓症 カテーテルなど、身体にとっての異物が血液に触れると、血液は凝固しやすくなり、血栓が生じることがあります。 血栓が身体のさまざまな臓器の動脈をふさいでしまうと、その臓器には血液が届かなくなり、臓器不全の状態に陥ります。 これを血栓塞栓症といいます。 例えば、脳の血管に血栓が詰まれば脳梗塞が、肺に詰まれば肺塞栓となります。 また、カテーテルを刺した静脈の血流が滞るために、刺した部分の心臓より遠い側の静脈が血栓の形成を伴う炎症を起こす、深部静脈血栓症という合併症を起こす可能性もあります。 これを予防するために、検査中にヘパリンと呼ばれる血液を固まりにくくする薬を使います。 感染症 血管に穴をあけてカテーテルなどの異物を入れるので、細菌などの微生物が体内に入り、感染症にかかる可能性が高くなります。 薬剤アレルギー 手術に必要な薬物、特にレントゲン撮影による透視において血液の流れを見るために用いる造影剤に対して、体質的に薬物アレルギーが生じる場合があります。 一過性の血圧低下 血管や心臓の内部に刺激を加えたり、また手術を受けるという精神的な緊張感によって、手術中の患者さんの自律神経は極度に興奮しているものと考えられます。 手術が終わって、カテーテルなどを血管から抜き去ると、同時に患者さん自身もほっと安心して気がゆるむため、今まで張り詰めていた自律神経のバランスが崩れ、その反動として血圧や胃腸の活動が急激に変わることがあります。 具体的な症状として、低血圧による意識が遠くなる感じや冷や汗、吐き気などです。 患者さんは手術がうまくいかなかったせいではないかと心配されるかもしれませんが、アブレーション治療とは直接関係のない症状です。 ただし、こうした異変を感じたときは、念のため、我慢せずに医療スタッフにお知らせください。 7.アブレーション治療の実際 では、実際にアブレーション治療を受けるときの手順を追ってみましょう。 1) 検査・治療を始める前に 検査の前に、主治医と医療スタッフが病歴について検討します。 特に問題がなければ、主治医から検査や治療についての説明(検査・治療の必要性、内容、リスクなど)があります。 患者さんは、説明を十分に理解した上で、異議がなければ同意書に署名します。 その後、検査・治療が始まります。 疑問点があれば遠慮なく医療スタッフにお聞きください。 2) 手術前日まで 手術に必要な検査や情報が得られていれば、何週間も前から入院していただく必要はありません。 通院で必要な検査を受け、手術数日前~前日からの入院で治療可能です。 検査・治療前の数日間は、抗不整脈薬や抗凝固剤の服用を中止していただくことがあります。 そのため、不整脈が起こりやすくなりますので、不安な場合は医療スタッフにご相談ください。 また、以前に気を失うなどの大きな症状を経験された方は、心電図モニタ-をつけて24時間医療スタッフが観察させていただきます。 念のため、手術前・手術後を通して自分ひとりだけになる場所には行かず、必ず誰かがそばにいるような状況にしてください。 手術前には、除毛や入浴、手術に必要な衣服(前開きの寝巻き(浴衣)・T字帯)や物品の準備など、一般的な手術の準備を行います。 また、治療が朝からの場合は朝食を摂ることができません。 問題があるようでしたら、医療スタッフにご相談ください。 3) 手術当日 アブレーション治療の様子 多くの場合、手術は局所麻酔で行われますので、意識のあるまま、治療を受けていただくことになります。 太ももの付け根などの挿入部付近を消毒し、局所麻酔をしてから血管にカテーテルを挿入します。 手術中は、心電図を見ながら治療を進めます。 モニターがさまざまな音を立てますが、医療スタッフがモニターを常時監視していますので、安心してください。 無菌的に手術を行うため、カテーテル挿入部を消毒した後、滅菌した布を身体全体を覆うようにかけます。 手術部位を清潔に保つために、手足は大きく動かすことができなくなります。 どこかがかゆい、などの姿勢を変える必要がある場合には、気軽に医療スタッフにお知らせください。 術中、動悸や脈が途切れる感じがすることがありますが、これは電気刺激で脈をつくっているためですので、心配はいりません。 さらに、発作が誘発された場合にでも、電気刺激で停止させることが可能ですから、心配の必要はありません。 術中に使用される薬剤により、動悸、のどが渇く、目がチカチカするなどの症状が現れることがあります。 これは、効果が消失すればなくなります。 手術中、自分の身体に何か変わったことがあったら、「動悸がする」「胸の中が熱く感じる」など、遠慮なく声に出して伝えてください。 ただし、カテーテルの位置が移動しないよう、身体はなるべく動かさないようにしてください。 手術は、個人差もありますが、平均4、5時間になります。 手術が終わった直後に、一過性の血圧低下が生じ、気分が悪くなることがあります。 そのときは医療スタッフにお知らせください。 4) 手術後 手術が終わった直後は、カテ-テルが入った部位から出血しないように、2時間は上を向いたまま足を曲げずに寝て頂きます。 その後4時間は、足をまっすぐにしたまま看護師がお手伝いして横向きになれます。 (安静時間はカテ-テルの種類により個人差がありますので、その都度説明させていただきます。 ) カテーテルを入れた部分からの出血がないかどうか、心電図の異常や合併症の症状が認められないかどうかなどを医療スタッフが頻繁にチェックします。 挿入部位に不快感(湿っている、腫れている感じなど)がある場合には、お知らせください。 手術が終わったその日は、ベッドの上で安静にしていてください。 問題がなければ、翌日からでもベッドを離れて歩くことができます。 傷口は毎日看護師が消毒します。 心電図を含めて検査の結果が良好でしたら、手術を受けた3日から5日後には退院することができます。 8.治療後の生活について アブレーション治療は、成功すれば根本的に不整脈の原因を取り除くことのできる治療ですので、原則的には健康なときと同じように生活することができます。 ただし、いくつか心がけるべきこともあります。 退院後、血栓形成を抑制する薬(など)の服用が一定期間必要となる場合があります。 服用については、その作用や副作用の説明を受けて理解し、指示に従って正しく服薬してください。 不整脈が再発したり、異常を感じた場合は、なるべく早く医師や医療スタッフに報告し、受診してください。 脈に異常がないかどうか、自分で脈を診る訓練を受けてください。 定期的な通院は必要となります。 通院の期間や頻度については、主治医または医療スタッフにお尋ねください。 最終更新日 2011年03月24日.

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アブレーション と は 医療

心臓のアブレーション治療とは? アブレーション治療とは、「頻脈性不整脈(ひんみゃくせいふせいみゃく)」という病気に対して行われる治療法です。 心臓の拍動リズムは通常一定の速さを保っていますが、激しい運動や緊張などの心拍が早まる原因がないにも関わらず、何らかの異常によって脈拍数が多くなることを頻脈性不整脈と呼んでいます。 「アブレーション」とは、「取り除く・切除する」という意味で、医学的には、「カテーテルの先から高周波電波を流し、カテーテル先端が接している生体組織を小さく焼き切る」ことを意味しています。 これを専門用語では「電気焼灼(でんきしょうしゃく)」と呼ぶこともあります。 心臓のアブレーション治療では、足の付け根などの太い血管からカテーテルを入れ、心臓の中にある疾患部位を小さく高周波電波で焼き切ります。 頻脈性不整脈の原因は、余分なリエントリー回路や異常自動能を有する部位があるためです。 これらの異常な電気活動を薬剤で抑える方法もありますが、 部位そのものを取り除かないと根本的な治療にはなりません。 心臓は自律神経の支配下にあるとともに、自動能という自律的な機能があり、この両者のバランスによってリズムを調整されながら拍動を行っています。 自動能そのものは神経による制御を受けない、心臓自身による独自の電気刺激システムです。 このシステムに異常をきたしたものが異常自動能と呼ばれます。 また、細胞は電気信号によって生命活動を行っていて、心臓も例外ではありません。 心臓において、電気信号の回路が正常な拍動のための通り道以外にもできてしまったとき、その別の回路を電気信号が回り続けてしまうことをリエントリーと呼び、リエントリーの巡っている回路のことをリエントリー回路と呼んでいます。 以前の治療法は、手術で胸部を切開し、直接心臓を操作して異常な部位を切除する方法でした。 しかし、心臓に直接メスを入れるのは大手術であり、患者さんの受ける負担も非常に大きいものでした。 そこで、 胸を切開する必要のない「アブレーション治療」が開発されました。 アメリカで1982年に始めて実際の治療に用いられてのち、日本でも急速に普及してきました。 アブレーション治療は、経験を積んだ医療チームが不整脈に対して行った場合、成功率は9割を超えると言われており、安全性も高いと言えます。 現在では、比較的侵襲性の低い安全かつ効果的な治療法として、定着してきたと言っても過言ではないでしょう。 アブレーション治療が必要になる病気は? アブレーション治療が必要になる病気は、上室性・心室性に大きく分けられますが、さらに細かく分けると6種類の病気があります。 上室性の頻脈性不整脈 房室回帰性頻拍(ぼうしつかいきせいひんぱく) 房室結節回帰性頻拍(ぼうしつけっせつかいきせいひんぱく) 心房粗動(しんぼうそどう) 心房頻拍(しんぼうひんぱく) 心房細動(しんぼうさいどう) 心室性の頻脈性不整脈 心室頻拍(しんしつひんぱく) まず、「房室回帰性頻拍」「房室結節回帰性頻拍」の2つは、「発作性上室性頻拍(ほっさせいじょうしつせいひんぱく)」をさらに細かく分けたものです。 「発作性上室性頻拍」とは、突然起こる発作的な頻拍のうち、原因となる部位が心室よりも上の領域(=上の部屋)にある頻発性不整脈のことを指します。 「房室回帰性頻拍」とは、心室と心房とを結ぶ副回路ができてしまい、一度心室へ伝わった電気信号が再び心房へと戻ってきてしまい、この回路上をループ状に周り続けることで起こる頻発性不整脈です。 「房室結節回帰性頻拍」とは、副回路はありませんが、心室と心房をつなぐメイン回路の中で電気信号の伝わる速度に差ができてしまい、早い経路と遅い経路でやはりループ状の回路ができてしまった状態です。 「房室回帰性頻拍」「房室結節回帰性頻拍」のいずれも、原因となる部分がはっきりしていることに加え、領域も限られているため電気焼灼のターゲットを定めやすく、 アブレーション治療が最も有効なタイプの不整脈であると言うことができます。 「心房粗動(しんぼうそどう)」は、心房の筋肉が毎分250~400回も収縮してしまう不整脈のことを指します。 多くは右心房を円形に回り続ける電気信号によるものですが、収縮する電気信号のうち、心室に伝えられるのはこのうちの一部ですから、脈拍数が250回もに増えるということではありません。 心房粗動もアブレーション治療が有効な治療法で、この円形の回路のどこかを断絶するように電気焼灼します。 「心房頻拍(しんぼうひんぱく)」は、心房のどこかに異常自動能を有するために上室性頻拍となってしまった状態のことを指します。 異常自動能を有する部位の数が少なく、かつ位置が特定できれば、アブレーション治療によって電気焼灼することで完治が期待できます。 「心房細動(しんぼうさいどう)」は、心房内で無秩序に電気信号が多発することにより、心臓が痙攣したような状態になることです。 血液を心室へ送り出す心房としての役割を全く果たせなくなってしまうため、心房細動が長時間続くと、内部に溜まった血液が凝固して血栓となってしまいます。 この血栓が流れ出すと他の臓器の動脈を塞いでしまい、脳梗塞や肺塞栓などの合併症を引き起こす可能性があります。 心臓のポンプ機能にはあまり影響しないため、短期的には強い症状が現れることもないのです。 非常にまれな現象ですが、心房細動の異常な電気信号が心室に伝わると、心室頻拍へ移行することもあります。 心房細動は、原因となる部位を特定しにくいため、アブレーション治療は無効だといわれてきました。 心室頻拍は、特発性と二次性の2つに分けられます。 原因となる別の病気などがはっきりしないものを特発性、心筋梗塞や心筋症などの心臓病に合併するものを二次性と呼んでいます。 心室は、心臓から血液を最終的に送り出すポンプの役割を持っているため、長時間にわたってそのポンプ機能が障害されると生命をおびやかす危険な状態に陥る可能性があります。 特発性心室頻脈の場合、原因となる副回路や異常自動能の部位の主なパターンが明らかにされているため、アブレーションによる治療が有効です。 二次性心室頻脈は、電気信号の伝達に異常があることが原因であるのではないかと考えられていますが、個々の症例によって違いが大きいため、アブレーション治療が難しい不整脈の一つです。 アブレーション治療の対象にならない病気は? 不整脈であっても、アブレーション治療を行うのが推奨されない病気もあります。 急性の感染症にかかっている場合や、重症の心不全、血が止まりにくい病気を有している場合などです。 感染症の場合はもちろんアブレーション治療は行なえませんし、後者の場合はアブレーション治療を行うかどうかは非常に慎重に検討する必要があります。 アブレーション治療ってどんなふうに行うの? アブレーション治療の施術の流れは、以下のようになります。 施術前 治療前に、担当医とスタッフで治療方法の検討を行う 担当医から治療の流れや合併症のリスクなどについて説明がある 施術前日 治療数日前〜前日に入院する(必要な検査が終わっていない場合は、検査のための入院期間が必要なこともある) 治療前の数日間は、抗不整脈薬や抗凝固薬などの服用は中止する必要があることも 治療前日には、治療の際にカテーテルを挿入する太もも付け根付近などの除毛や入浴などを済ませ、施術に備える 施術当日 治療開始前に、太ももの付け根などカテーテルの挿入部位を消毒後、局所麻酔する 麻酔が効いたら、カテーテルを挿入するための管(シース)を血管に挿入する 管(シース)を通じて血管に電極カテーテルを挿入する 挿入した電極カテーテルを心臓内の各部分に留置する 心臓内に留置した電極カテーテルから電気刺激を与え、治療に必要な検査を行う 得られたデータをもとに、治療用カテーテルを心臓内に挿入し、焼灼が必要な部位に留置する 治療用カテーテルにより、焼灼する部分に高周波通電を行う 焼灼後、電極カテーテルから電気刺激を行うなどし、焼灼の効果を確認する 効果を確認後、心臓内に留置したカテーテルを全て取り除く 管(シース)を取り除き、挿入部位の止血を行い、治療を終了する 施術後 施術が終わった当日はベッドの上で安静にする カテーテルを入れた部分からの出血や心電図の異常・合併症などがないか、医療スタッフがチェックし、異常がなければ翌日からベッドを降りて歩くことができる 問題がなければ、治療後数日~1週間程度で退院 アブレーション治療の施術は、意識のある状態で行います。 治療は心電図を見ながら進められるため、検査機器などの音が気になってしまう人もいますが、常に医師や医療スタッフがモニターを監視しているので、心配する必要はありません。 治療中は深呼吸や咳払いをするとカテーテルの位置が動いてしまい、安全に治療が行えなく鳴ってしまう可能性があります。 そのため、 できるだけ平常の呼吸を心がけ、体を動かさないようにしましょう。 心臓のアブレーション治療で起こり得る合併症は? アブレーション治療による合併症は、主に「脳梗塞」と「心穿孔」の2種類が考えられます。 脳梗塞 心房細動のアブレーション治療において、0. 3~0. これらの合併症は、患者さんの状態や治療する不整脈の種類によっても発生率が異なります。 おわりに:アブレーション治療は安全だが、有効な不整脈は限られる アブレーション治療は、胸部を切開したり心臓を直接操作したりすることがないため、患者さんの負担は非常に軽い治療であると言えます。 熟練したチームであれば成功率も9割を超え、安全性も高いです。 反面、アブレーション治療は焼灼する範囲がごく小さいため、この治療法を行うには「異常部位の位置がはっきり特定できる」ことが必要です。 アブレーション治療を希望される場合は、担当医とよく話し合いましょう。

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アブレーションによるタトゥー除去施術とは

アブレーション と は 医療

アブレーション治療は、心臓の拍動リズムに異常を来して脈拍数が多くなる、「頻脈性不整脈(ひんみゃくせいふせいみゃく)」という病気に対し行われる治療法です。 足の付け根などの太い血管からカテーテルを入れて、心臓内部の不整脈の原因となっている部分を小さく高周波電流で焼き切ります。 手術が成功すれば不整脈の根本的な治療をすることができます。 初めに不整脈という病気について、次にアブレーション治療について説明します。 1 心臓のリズム(刺激伝導系)について 1) 拍動する心臓 図1 血液の流れ 図2 刺激伝達系 心臓は、血液を身体中に送り届けている大事なポンプです。 血液の流れを見てみましょう(図1)。 全身から戻ってきた血液は、大静脈を通り心臓へ入ります。 まず右心房に入り、次に右心室に移動してから心臓を出て、肺へと送り出されます。 そして、肺で要らなくなった二酸化炭素と酸素を交換して心臓に戻ってきます。 肺から戻ってきた血液は左心房に入り、次に左心室に移動してから、全身へと送り出されます。 この血液の流れをつくっているのが心臓の拍動です。 心臓の各部分の筋肉が協調して収縮することで、初めて効率良く血液を全身に送り出すことができるのです。 上手に拍動するために、心臓には 「刺激伝導系」と呼ばれるしくみが備わっています。 2) 刺激伝導系について 刺激伝導系とは、心臓の筋肉の中を走る一方通行の電線のようなものです(図2)。 心臓の筋肉の一種ですが、普通の筋肉とは異なり、筋肉が収縮するための電気信号をすばやく伝え、さらに自ら電気信号を一定の間隔で発生する能力を持っています。 右心房にある 洞結節(どうけっせつ)というところが、刺激伝導系の開始点です。 この洞結節は、何も刺激を受けなくても、一定時間ごとに繰り返し電気信号を発生します。 これが私たちの心臓の脈の速さを決めているのです。 洞結節で発生した電気信号は、心房の筋肉を伝わって 房室結節(ぼうしつけっせつ)へ伝わります。 このとき、心房の筋肉は収縮し、心房の中に溜まっていた血液は心室へと送られます。 電気信号を受け取った房室結節は、わずかな時間だけ待ってから、心室へと向かう ヒス束(そく)へ信号を伝達します。 こうして信号の伝達を少し遅らせることで、心房が収縮しきる前に心室が収縮し始めてしまうことを防ぐことができます。 伝導系は、ヒス束から左脚、右脚の2つに分かれた後、さらに細かく枝分かれ( プルキンエ線維)して、心室の筋肉全体に電気信号を伝えます。 こうして心室の筋肉は収縮し、心室の中に溜まっていた血液を力強く心臓から全身へと送り出すのです。 順番を逆にさかのぼって電気信号が伝わることはありません。 心臓の筋肉の収縮も、血液の通り道と同様に、「心房から心室へ」の順番が正しく守られているのです。 心電図について 心臓の筋肉が収縮するときの電気活動は、心電図を見るとわかります。 簡単な心電図の波形を見てみましょう(右図)。 心電図には「P波」や「QRS波」という波形があります。 このP波は心房の収縮を、QRS波は心室の収縮を表しています。 QRS波がP波より大きいのは、心房よりも次に収縮する心室の方が筋肉の量が多いからです。 正常な心電図では、必ず先にP波(心房の収縮)がきて、一定の時間後にQRS波(心室の収縮)が現れる、この繰り返しになります。 このように、刺激伝導系の働きは心電図から読み取ることができるのです。 2.不整脈の原因 1) 不整脈とは 刺激伝導系が正常に機能しているときは、心臓は規則正しく収縮し、血液を送り出すことができます。 しかし、この刺激伝導系に障害が生じると、心臓の収縮運動が乱れ、脈の間隔や強さの異常となって現れます。 脈が速くなって動悸を感じたり、逆に脈が途切れたり遅くなったりして意識を失うような発作を起こしたりします。 脈に異常を来すとどうなるのでしょうか? たまに起きても、すぐ正常に戻るような不整脈であれば、何も症状が現れない場合もあります。 しかし、異常に脈が多くなり過ぎると、激しい動悸や胸の中の不快感を感じるようになります。 また、心臓が頻繁に収縮する場合には、逆に血液を送り出す効率が下がり、疲労感や息苦しさ、意識が遠くなるようなめまい・ふらつきといった症状が現れます。 また、脈が極端に少なくなることもあり、その場合は疲労感や息切れ、めまいなどが現れ、重症のときには意識を失う発作が起きることもあります。 脈が規則的な間隔を外れて突然出現することもあり、そのときには胸の中の不快感や心臓の痛みを伴うこともあります。 2) 不整脈を起こす原因 不整脈には、不整脈を起こす別の原因がある場合と、別の原因があるのかどうかはっきりしていない場合があります。 心臓自体に病気がある場合、例えば心筋梗塞や心筋症などで、心臓の筋肉が障害を受けていると、刺激伝導系にも障害が生じ、不整脈が現れやすくなります。 心臓以外の病気、例えばホルモンや血液中の電解質イオンや自律神経系活動などのバランスが崩れるような病気の場合、不整脈が合併症として現われることがあります。 心臓はこれらの要因によって心拍数や収縮力の調整を受けているためです。 また、心臓病などの治療のために服用している薬の副作用で不整脈を生じることもあります。 不整脈と診断されて検査を受けても、上記のようなはっきりした別の病気が見つからない場合は、原因として、生まれつき刺激伝導系に異常がある場合や、加齢による刺激伝導系の機能の低下が疑われます。 また、高血圧や喫煙、精神的なストレスなど、心臓に負担をかけるさまざまな要因が複合的に合わさって、不整脈を悪化させているとも考えられています。 3) 不整脈の起こるしくみ(頻脈性不整脈の場合) 図4 リエントリー(副伝導路) 図5 異常自動能 それでは、実際に不整脈が起こるしくみについて、もう少し詳しく見てみましょう。 心臓や刺激伝導系ではどのような異常が起きているのでしょうか? ここでは、アブレーション治療の対象となる頻脈性不整脈の場合を考えてみます。 この場合、刺激伝導系の異常は2つに大別できます。 1 リエントリーとは 正常な刺激伝導系とは別に、電気信号を伝えてしまう第2の伝導路が存在することがあります。 これを副伝導路と呼びます。 副伝導路が存在すると、本来は一方向へ流れるはずの電気信号が副伝導路を通って上流に戻ってきてしまい、いつまでも電気信号がぐるぐる回り続けてしまうことになります。 すると、心臓の筋肉は絶え間なく収縮するように電気信号を受け続け、頻脈性不整脈になってしまうのです。 このような状態をリエントリーと呼びます(図4)。 2 異常自動能とは 洞結節は、特別な刺激を受けなくても、一定の時間ごとに自動的に電気信号を発生します。 この自動能が洞結節以外の部分にできてしまうことがあります。 異常自動能の部位が存在するということは、あたかも命令する指揮官が2人以上いるようなもの、です。 結果的に、心臓の筋肉は2ヶ所以上の場所からそれぞれに発生する電気信号を受け、頻繁に収縮を繰り返し、頻脈性不整脈に陥ります(図5)。 3.不整脈の種類 1) 健康な人でも起こる不整脈と病気の不整脈 不整脈にはさまざまな種類があり、健康な人でも時々は起こる不整脈というものもあります。 自分の脈を注意深く触れてみると、まれに脈が1回だけ欠落したり、本来の間隔ではないタイミングで脈を感じたりすることがありますが、これは健康な人でも起こる不整脈である場合がほとんどです。 心臓の収縮のリズムがおかしくなると、心室に十分な量の血液を溜めないうちに収縮しなくてはならなくなるため、血圧を急速に高めることができず、心臓は収縮していても脈が欠けたように感じるのです。 このように、不整脈が存在していても問題がないか、あるいはその後の生活の中で新たな症状が生じてこない限り、様子を見ていればいいだけの場合も多くあります。 もし、医師から不整脈と診断された場合は、不整脈という言葉に慌てることなく、どの程度心配しなくてはならない不整脈なのか、よく説明を受けて納得されることが大事になります。 不整脈の種類によって、症状の現れ方や危険度、適切な治療の方法が異なってきます。 2) 頻脈性不整脈と徐脈性不整脈 不整脈が起きた結果として、「脈が速くなる」、「脈が遅くなる」という2つに分けられます。 安静時でも1分間当たり100回以上と脈拍数が異常に多くなり、動悸を感じたり、意識が遠くなるような症状が現れる不整脈を 「頻脈性不整脈(ひんみゃくせいふせいみゃく)」といいます。 逆に、脈拍数が1分間に50回以下と少なくなり、意識を失うような症状が現れる不整脈を 「徐脈性不整脈(じょみゃくせい ふせいみゃく)」といいます。 頻脈性不整脈は、刺激伝導系に余分な電気信号の発生源や伝達路ができてしまうことが原因です。 頻脈性不整脈はアブレーション治療の対象となります。 逆に、徐脈性不整脈は刺激伝導系の働きが落ちていることが原因なので、ペースメーカーを装着し、外部から人工的に心臓の電気信号を補う治療となります。 3) 上室性不整脈と心室性不整脈 刺激伝導系の異常が起きている場所に応じて、2つに分類する方法があります。 問題となっている異常の場所が心室よりも上、すなわち心房の筋肉や刺激伝導系の洞結節・房室結節にある場合を 「上室性不整脈(じょうしつせいふせいみゃく)」といいます。 心室の筋肉や刺激伝導系のヒス束・左脚・右脚などにある場合には 「心室性不整脈(しんしつせい ふせいみゃく)」といいます。 アブレーション治療の対象となる頻脈性不整脈の場合では、一般に上室性不整脈の方が異常部位がわかりやすいので、アブレーション治療の効果が期待できます。 (参照)。 4.アブレーション治療とは カテーテルの参考写真 図6 カテーテルの挿入場所 アブレーション(ablation)とは、「取り除くこと、切除すること」という意味です。 医学的には、カテーテルの先から高周波電流を流して、接している生体組織を小さく焼き切ることを意味します。 このことを専門用語では、 電気焼灼(でんきしょうしゃく)と呼びます。 既に述べたように、頻脈性不整脈の原因は、余分なリエントリー回路や異常自動能を有する部位が存在するためです。 抗不整脈薬という種類の薬でこれらの異常な電気活動を抑制することもできますが、異常な部位そのものを取り去るわけではないので、根本的な治療とは言えません。 以前は手術で胸を開き、直接心臓を操作して異常な部分を除去していました。 しかし、大手術になるため、患者さんの受ける負担はとても大きなものでした。 そこで、胸を切らなくてもよい、アブレーション治療というものが開発されました。 初めて実際の治療に用いられたのは1982年、アメリカでのことです。 その後、日本でも急速に普及してきました。 アブレーション治療の効果が高い不整脈に対して、経験を積んだ医療チームが施行した場合、成功率は9割を超えると言われ、現在では効果的な治療法として定着したと言っても過言ではありません。 アブレーション治療では、まず専用のカテーテル(写真)を、主に足の付け根にある太い血管(大腿静脈ないし大腿動脈)から入れ、そのカテーテルの先をレントゲン撮影で透視しながら心臓まで到達させます(図6)。 カテーテルの先には心電図を計測するための電極がついていて、それで心臓の内壁に接触させながら心電図を計測します。 この計測によって、今カテーテルが接している部分が、副伝導路などの異常な部位であるかどうかがわかります。 この異常な部分を探す作業のことを「マッピング」と呼びます。 異常な部分があることがわかったら、次にカテーテルの先の電極から高周波電流を流します。 強い電流によって、カテーテルの先に触れているわずかな領域の心臓組織だけが電気的に焼かれて、細胞は死滅します。 1回の焼灼あたり、電流を流す時間は1分以内、焼灼範囲は直径、深さとも5mm程度です。 実際にアブレーション治療を受けると胸の中で熱さを感じますが、カテーテルの先には温度センサーがついていて、高温になり過ぎる前に電流を遮断しますので、必要のない部分まで焼灼してしまうことはありません。 異常な部位をすべて焼灼できた、もしくは異常な電気信号伝達を防ぐ焼灼ができたと思われるまで、焼灼を何度か繰り返すこともあります。 また、1回の治療では異常な部位を完全に焼灼できなかった場合、後日再びアブレーション治療を行うこともあります。 当院では、カテーテルは主に太ももの付け根の大腿静脈から入れますが、場合によっては肘静脈もしくは内頸静脈から入れることもあります。 全体の手術時間は3~6時間ですが、個人によって差があります。 局所麻酔で施術可能です。 図7 アブレーション治療 5.アブレーション治療の対象となる不整脈 アブレーション治療の対象となるのは頻脈性不整脈ですが、適用しやすく治りやすい場合と、適用しにくい場合があります。 その違いを見てみましょう。 1) 上室性の頻脈性不整脈 1 発作性上室性頻拍(ほっさせいじょうしつせいひんぱく:Paroxysmal SupraVentricular Tachycardia, PSVT) 突然発作的に生じ、心室よりも上の心房や房室結節の領域に原因のある頻脈性不整脈です。 原因となる部位によって、さらに2つに分けられます。 房室回帰性頻拍(ぼうしつかいきせいひんぱく:AtrioVentricular Reentrant Tachycardia, AVRT:WPW症候群) この病気のしくみを発見した3人の名前の頭文字をとって、 WPW症候群とも呼ばれます。 房室結節やヒス束以外に、心室と心房とを結ぶ副伝導路があるために、一度心室へ伝わった電気信号が再び心房へ戻ってきてしまう病気です。 電気信号が閉じた伝達経路をループ状に回り続けるために、心房と心室が絶え間なく電気信号を伝え合い、頻脈性不整脈に陥ります。 房室結節回帰性頻拍(ぼうしつけっせつかいきせいひんぱく:AtrioVentricular Nodal Reentrant Tachycardia, AVNRT) この病気では副伝導路は存在しませんが、1つの房室結節の内部で電気信号の伝わる速さに差があるために、速い経路と遅い経路でループ状の電気信号の伝導路を形成するものです。 電気信号が房室結節内を回り続けて心房と心室を交互に刺激するため、やはり頻脈性不整脈に陥ります。 房室回帰性頻拍も房室結節回帰性頻拍も、原因となる部分がはっきりしており、領域も限られているため、アブレーション治療が最も有効な不整脈であると言えます。 2 心房粗動(しんぼうそどう) 心房の筋肉が毎分250~400回も収縮する状態の不整脈のことで、多くの場合は右心房を円形に電気信号が回り続ける異常な電気活動によるものです。 心房が収縮する電気信号のうち、心室に伝えられるのはこのうちの何分の1かだけなので、実際の脈拍数が毎分250回になったりすることはありません。 心房粗動もアブレーション治療が有効で、この異常な円形の伝達経路のどこかを断絶するように焼灼します。 3 心房頻拍(しんぼうひんぱく) 心房のどこかに異常自動能を有する部分が存在するために、上室性頻拍が生じるものです。 その異常な部位の数が少なく、位置を特定できれば、アブレーション治療によって完治する可能性が高くなります。 4 心房細動(しんぼうさいどう) 心房が痙攣したようになり、血液を心室へ送り出す心房としての役割を全く果たせなくなる病気です。 心房内で無秩序な電気信号が多発している状態と考えられています。 60才以上で人口の6~7%の高齢者に見られる病気で、心臓のポンプ機能には余り影響しないため、短期的には強い症状が現れることはありません。 しかし、心房細動が長期間続くと、心房の中で滞留した血液が凝固して血栓となり、それが他の臓器の動脈を塞いで血栓塞栓症、例えば脳梗塞や肺塞栓などを引き起こすことがあります。 また、非常にまれに心房細動の異常な電気信号活動が心室まで伝わり、心室頻拍に移行することもあります。 以前は、原因となる部位を特定しにくいため、アブレーションによる治療は無効だと考えられてきました。 しかし、近年、左心房-肺静脈接合部の異常自動能がその原因の90%を占めることが明らかになり、薬物療法などと組み合わせたアブレーション治療が行われるようになってきています。 2) 心室性の頻脈性不整脈 1 心室頻拍(しんしつひんぱく) 心室は最終的に心臓から血液を送り出す働きをしています。 そのため、長時間にわたってそのポンプ機能が障害されると、命にかかわる危険な状態に陥ります。 心室頻拍もそうした危険な不整脈の1つです。 原因となる別の病気などがはっきりしない「特発性心室頻拍」と、心筋梗塞や心筋症などの心臓病に合併する「二次性心室頻拍」とに分けられます。 特発性心室頻拍では、原因となる副伝導路もしくは異常自動能を有する部位の主なパターンが明らかにされており、アブレーションによる治療が有効です。 二次性心室頻拍は、心筋梗塞などで障害を受けた心臓の筋肉の周囲に生じるループ状の異常な電気信号伝達によるものと考えられていますが、その経路は症例によってさまざまな違いがあり、アブレーション治療が難しい不整脈の1つです。 薬物療法及び植え込み型除細動器(ICD)などと併用することなどで、有効なアブレーション治療の方法が試みられています。 3) 治療の対象にならない場合 アブレーション治療の対象となる不整脈について述べてきましたが、逆に不整脈であってもアブレーション治療を行うべきではない場合もあります。 例えば、急性の感染症にかかっている場合には、アブレーション治療は行いません。 また、重症の心不全や出血しやすく血が止まりにくい病気の場合には、アブレーション治療を行うべきかどうか慎重に判断します。 6.アブレーション治療の利点と合併症 1) アブレーション治療の利点 アブレーション治療の利点は次のようなことが挙げられます。 開胸手術をする必要がないので、治療を受ける患者さんへの身体の負担が軽い。 心臓内で原因となる部分をマッピングによってはっきり決定することができるので、手術が成功すれば根本的な治療となる。 長期間にわたって薬を飲み続けたり、頻繁に通院する必要がなくなる。 どちらも、患者さんの生活の質(QOL)を高める上で大きな利点となります。 2) 合併症 1 手術中の外傷に起因する合併症 カテーテルの先端を血管から通して心臓内まで慎重に送り治療を行うわけですが、カテーテルを通す途中で周囲の組織を傷つけてしまう可能性があります。 止血不良、内出血 カテーテルを血管(主に大腿静脈や内頸静脈などの太い静脈)に挿入するとき、あるいはカテーテルを抜いた後、そこからの出血がなかなか止まらないことがあります。 カテーテルを抜いた後はその部分をしばらく圧迫して止血します。 出血が止まりにくいと血管の周囲に血液が漏れ出し、内出血となることがあります。 直後は痛みも伴い、青紫色の斑が残りますが、時間が経てば自然に吸収されて消えていきます。 血管損傷 カテーテルを血管内に挿入し、心臓へ向かって進める間に、血管の壁を傷つけてしまうことがあります。 軽い傷ならば自然に治りますが、放置しておいては治らないような血管の損傷が生じることがあります。 大腿動脈などの太い動脈にカテーテルを刺したときに生じやすく、血管の壁が二層に裂けて、その間に血液が溜り瘤(こぶ)状に膨らむ仮性動脈瘤や、血管に大きな傷をつけた結果、動脈と静脈が直接つながってしまう外傷性動静脈瘻(ろう)などがその例です。 この場合、手術により治す必要があります。 心臓穿孔 X線による透視を行い、カテーテルの位置を確認しながら心臓の内部で慎重に作業を行いますが、まれにカテーテルの先端が心臓の壁を傷つけてしまうことがあります。 このことを心臓穿孔(せんこう)といいます。 心臓から出血が起こり、血液が心臓の周囲に溜まることがあります。 心臓は心膜という丈夫な膜で包まれているので、出血が続くと膜の中に血液が充満し、心臓を周囲から圧迫してしまいます。 この状態を血液による心タンポナーデと呼びます。 心臓は周囲から圧力を受け、十分に拡張することができなくなり、血液を送り出すポンプ機能が低下し、心不全に陥ってしまうため、心膜の中に管を入れ、血液を流し出す必要があります。 房室ブロック 心臓内のカテーテルが正常な刺激伝導系を傷つけると、新たな不整脈の原因となります。 特に、刺激伝導系を傷つけた結果、心房から心室への電気信号の伝達が障害されると、房室ブロックと呼ばれる徐脈性不整脈を引き起こします。 自然に回復することがほとんどですが、回復しない場合、人工ペースメーカーの挿入が必要になることがあります。 気胸 内頸静脈など肺に近い位置の血管にカテーテルを入れる場合、肺を覆っている胸膜を傷つけてしまい、胸腔に外部の空気が入り込んでしまうことがあります。 これが気胸です。 気胸になると、息を吸っても肺が十分に膨まず、息苦しさを感じるようになります。 対処として、胸のわき腹あたりにチューブを刺し、胸腔にたまった空気を外へ排出します。 2 直接的外傷によらない合併症• 不整脈の誘発 アブレーションによって治療すべき不整脈が手術前、手術中に頻発し、さらには別の不整脈にまで進展することがあります。 これは、原因部位を特定するマッピングを容易にするため、あえて不整脈を抑える薬を手術前から中断しているためです。 また、手術を受ける心理的な緊張も不整脈の出現を促進しているものと思われます。 当然のことながら、治療を行う医療スタッフもそのことを十分心得て手術に臨んでおり、対策も万全に整えています。 手術中の不整脈に関しては心配の必要はありません。 手術前に動悸などの不整脈症状に気がついたら、念のため医療スタッフにお知らせください。 血栓塞栓症 カテーテルなど、身体にとっての異物が血液に触れると、血液は凝固しやすくなり、血栓が生じることがあります。 血栓が身体のさまざまな臓器の動脈をふさいでしまうと、その臓器には血液が届かなくなり、臓器不全の状態に陥ります。 これを血栓塞栓症といいます。 例えば、脳の血管に血栓が詰まれば脳梗塞が、肺に詰まれば肺塞栓となります。 また、カテーテルを刺した静脈の血流が滞るために、刺した部分の心臓より遠い側の静脈が血栓の形成を伴う炎症を起こす、深部静脈血栓症という合併症を起こす可能性もあります。 これを予防するために、検査中にヘパリンと呼ばれる血液を固まりにくくする薬を使います。 感染症 血管に穴をあけてカテーテルなどの異物を入れるので、細菌などの微生物が体内に入り、感染症にかかる可能性が高くなります。 薬剤アレルギー 手術に必要な薬物、特にレントゲン撮影による透視において血液の流れを見るために用いる造影剤に対して、体質的に薬物アレルギーが生じる場合があります。 一過性の血圧低下 血管や心臓の内部に刺激を加えたり、また手術を受けるという精神的な緊張感によって、手術中の患者さんの自律神経は極度に興奮しているものと考えられます。 手術が終わって、カテーテルなどを血管から抜き去ると、同時に患者さん自身もほっと安心して気がゆるむため、今まで張り詰めていた自律神経のバランスが崩れ、その反動として血圧や胃腸の活動が急激に変わることがあります。 具体的な症状として、低血圧による意識が遠くなる感じや冷や汗、吐き気などです。 患者さんは手術がうまくいかなかったせいではないかと心配されるかもしれませんが、アブレーション治療とは直接関係のない症状です。 ただし、こうした異変を感じたときは、念のため、我慢せずに医療スタッフにお知らせください。 7.アブレーション治療の実際 では、実際にアブレーション治療を受けるときの手順を追ってみましょう。 1) 検査・治療を始める前に 検査の前に、主治医と医療スタッフが病歴について検討します。 特に問題がなければ、主治医から検査や治療についての説明(検査・治療の必要性、内容、リスクなど)があります。 患者さんは、説明を十分に理解した上で、異議がなければ同意書に署名します。 その後、検査・治療が始まります。 疑問点があれば遠慮なく医療スタッフにお聞きください。 2) 手術前日まで 手術に必要な検査や情報が得られていれば、何週間も前から入院していただく必要はありません。 通院で必要な検査を受け、手術数日前~前日からの入院で治療可能です。 検査・治療前の数日間は、抗不整脈薬や抗凝固剤の服用を中止していただくことがあります。 そのため、不整脈が起こりやすくなりますので、不安な場合は医療スタッフにご相談ください。 また、以前に気を失うなどの大きな症状を経験された方は、心電図モニタ-をつけて24時間医療スタッフが観察させていただきます。 念のため、手術前・手術後を通して自分ひとりだけになる場所には行かず、必ず誰かがそばにいるような状況にしてください。 手術前には、除毛や入浴、手術に必要な衣服(前開きの寝巻き(浴衣)・T字帯)や物品の準備など、一般的な手術の準備を行います。 また、治療が朝からの場合は朝食を摂ることができません。 問題があるようでしたら、医療スタッフにご相談ください。 3) 手術当日 アブレーション治療の様子 多くの場合、手術は局所麻酔で行われますので、意識のあるまま、治療を受けていただくことになります。 太ももの付け根などの挿入部付近を消毒し、局所麻酔をしてから血管にカテーテルを挿入します。 手術中は、心電図を見ながら治療を進めます。 モニターがさまざまな音を立てますが、医療スタッフがモニターを常時監視していますので、安心してください。 無菌的に手術を行うため、カテーテル挿入部を消毒した後、滅菌した布を身体全体を覆うようにかけます。 手術部位を清潔に保つために、手足は大きく動かすことができなくなります。 どこかがかゆい、などの姿勢を変える必要がある場合には、気軽に医療スタッフにお知らせください。 術中、動悸や脈が途切れる感じがすることがありますが、これは電気刺激で脈をつくっているためですので、心配はいりません。 さらに、発作が誘発された場合にでも、電気刺激で停止させることが可能ですから、心配の必要はありません。 術中に使用される薬剤により、動悸、のどが渇く、目がチカチカするなどの症状が現れることがあります。 これは、効果が消失すればなくなります。 手術中、自分の身体に何か変わったことがあったら、「動悸がする」「胸の中が熱く感じる」など、遠慮なく声に出して伝えてください。 ただし、カテーテルの位置が移動しないよう、身体はなるべく動かさないようにしてください。 手術は、個人差もありますが、平均4、5時間になります。 手術が終わった直後に、一過性の血圧低下が生じ、気分が悪くなることがあります。 そのときは医療スタッフにお知らせください。 4) 手術後 手術が終わった直後は、カテ-テルが入った部位から出血しないように、2時間は上を向いたまま足を曲げずに寝て頂きます。 その後4時間は、足をまっすぐにしたまま看護師がお手伝いして横向きになれます。 (安静時間はカテ-テルの種類により個人差がありますので、その都度説明させていただきます。 ) カテーテルを入れた部分からの出血がないかどうか、心電図の異常や合併症の症状が認められないかどうかなどを医療スタッフが頻繁にチェックします。 挿入部位に不快感(湿っている、腫れている感じなど)がある場合には、お知らせください。 手術が終わったその日は、ベッドの上で安静にしていてください。 問題がなければ、翌日からでもベッドを離れて歩くことができます。 傷口は毎日看護師が消毒します。 心電図を含めて検査の結果が良好でしたら、手術を受けた3日から5日後には退院することができます。 8.治療後の生活について アブレーション治療は、成功すれば根本的に不整脈の原因を取り除くことのできる治療ですので、原則的には健康なときと同じように生活することができます。 ただし、いくつか心がけるべきこともあります。 退院後、血栓形成を抑制する薬(など)の服用が一定期間必要となる場合があります。 服用については、その作用や副作用の説明を受けて理解し、指示に従って正しく服薬してください。 不整脈が再発したり、異常を感じた場合は、なるべく早く医師や医療スタッフに報告し、受診してください。 脈に異常がないかどうか、自分で脈を診る訓練を受けてください。 定期的な通院は必要となります。 通院の期間や頻度については、主治医または医療スタッフにお尋ねください。 最終更新日 2011年03月24日.

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