遠くから聞こえるそれは酷く耳障りだ。 いや、その声は近くから聞こえてくる。 『許してなるものか』 憎悪に燃える瞳が僕を見る。 なんだその目は?生意気だ。 僕を誰だと思っている。 声を張り上げようとするも、なぜだか声が出ない。 喉を触り異変がないかを確認するが変わった様子はない。 声だけが出ない。 必死に声を出そうとするが、嗚咽が出るばかりだ。 ふと、腹がひどく傷んだ。 手を添えれば止めどなく赤い何かがあふれてくる。 燃えるように腹が熱い。 「うっ………」 『許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 許さない。 あんたなんか許さない!!!』 王座の前で怨さの念を吐き続ける女が叫んだ。 こっちは満足に声も出せないというのにあいつだけ声が出せる。 なんと生意気な。 恨みがましい目を向けるな。 やめろ、お前はもういないんだ。 いつまでもいつまでも僕の前にいるな、目障りだ!!! どんなに叫ぼうと、どんなに睨もうと女は怯む様子もない。 女の手に握られた髪飾りは赤黒く汚れていた。 なんと、みすぼらしい事か。 そんな汚い物を僕の前に持ってくるなど不敬だ! ……けれど、どうしてだ?その汚れには見覚えがある。 目に焼き付くように酷く深いな記憶が。 「うっ…や、やめ……やめ…ろ……っ…」 『返せ。 子供を返せ。 父を返せ。 誇りを返せ。 返せ』 なんだ、なんなんだ! どうしてそんな目を僕に向ける。 やめろやめろやめろ!?!?!? 「やめろ…やめろ…」 『許さない。 返せない。 なら、なら、なら……………お前なんて死んでしまえ』 髪飾りを握り女は僕めがけて駆けてくる。 咄嗟に避けようとするも体が王座から離れない。 い、いったい何が!? マテ、来るな!やめろやめろやめろ!?!?!? ズブリと嫌な音が鳴る。 女の握る髪飾りが僕の腹に埋もれている。 体が動くようになり女を突き飛ばすと一緒に埋もれた髪飾りも腹から出ていく。 ああ、そうだ。 あの汚れは、ぼくの、血だ。 「うああああああああああああああああああああああ!?!?」 「ルブ!ルブ!しっかりして、いったいどうしたの?」 飛び起きた僕の前にいるのは銀色の髪の女ではない。 神秘的な漆黒の髪だ。 美優の声だ。 「美優…僕はいったい、そうだあの女が!あの女が僕を襲おうと!?」 「しっかりして!ここには私たち以外誰もいないわ……きっと悪い夢を見たのよ」 夢? ああ、そうだあれは夢だ。 だってそうだろう。 あの女がいるわけないんだ。 それにここは王座でもない。 僕の寝台だ。 冷静になればわかる事だ。 なのに……なのになぜ、こんなにも気持ちが悪い。 「夢……はは、そうだ夢だ。 あの女はもういない……はは」 だってあの女は、アリスティアは僕が殺したのだから。 ・ ・ ・ 千年の歴史を誇るかスティーナ帝国。 34代目皇帝であるルブリス・カマルディン・シャーナ・スティーナは20歳と若くして皇位を継いだ皇帝である。 前皇帝の治世より広大なる帝国を盤石に納め受け継いだ。 前皇帝は善政をひき名高きその名は名君と呼び声高い。 けれど、彼にはながくに渡り後継者がいなかった。 そんな折に生まれたのがルブリスであった。 皇帝唯一の血縁者であり皇太子。 その年の差故にルブリスが成人すると同時に前皇帝は崩御した。 前皇帝の時代。 神殿より知らされた神託は皇太子に伴侶となる女性が現れると。 その翌年生まれたのが開国時より多大なる貢献をした忠臣一族モニーク侯爵家のアリスティア・ラ・モニーク令嬢であった。 国の貴族、民は彼女こそが皇太子の伴侶であると信じて疑わず。 またアリスティア自身も幼い頃より優れた教育を施された才女である。 皇帝が崩御し、しばらく後に皇太子は成人を迎える。 あとは、アリスティアを皇宮 に迎えるだけという段階で美優が現れた。 美優は突然、皇宮の湖に現れ自身を異世界よりやってきたと証言した。 その当時は多くの人々が混乱したが、神殿は正式に美優を神託の乙女と決定する。 故に皇帝ルブリスには2人の伴侶がいた。 異世界より現れた神託の乙女。 皇后美優。 忠臣モニーク家の才女。 皇妃アリスティア。 そう、 いた ・・ のだ。 彼女らが皇帝に嫁いだ翌年。 アリスティアは皇帝殺害の罪により処刑された。 罪を犯した理由は美優に対し嫉妬したためと公表されるが真実は異なる。 アリスティアは皇帝ルブリスにより冷遇されていた。 幼い頃より周囲より持てはやされたルブリスは自尊心が強く、何でも自分が一番でなければ気が済まない性格だ。 そんな折、彼の周囲は何かとアリスティアを特別視していた。 それが気にいらなかったのだ。 周囲も悪気や悪意があったわけではない。 幼くして将来の伴侶が決まっていたルブリスに少しでもアリスティアの良い情報を与え将来的に2人がより良い関係を築けるようにと配慮した結果である。 アリスティアの冷遇は酷く、幼い頃より皇后となるべく育った彼女の誇りと尊厳を踏みにじるものであった。 特にひどいのは、アリスティアに宿った子供をルブリスは殺害したのだ。 公的には不幸な事故による流産とされたが。 元より体の弱いアリスティアは流産により子供を産めぬ体となる。 そんな時、美優に懐妊の兆しありと一方が届きアリスティアの心は壊れてしまった。 寝入っていた我が子を見舞いに来ていたモニーク侯爵により正気に戻ったがアリスティアの心はすでに限界であった。 体調戻らぬ中、美優は賊に襲われその時のショックで流産してしまった。 襲撃の主犯格として翌日捕らわれたのはモニーク侯爵。 アリスティアの嘆願も虚しくモニーク侯爵は処刑されてしまう。 父と子の復讐のためアリスティアはおのれの髪飾りでルブリスの腹部を刺し、その場で拘束されてしまう。 事が公になるとルブリスはアリスティアを公開処刑に処し、モニーク家の所有する領地、爵位、財産を没収した。 目障りな皇妃も死に、皇妃の家も取り潰した。 これでルブリスはなんの憂いもなく愛する女と国を繁栄させていく……とはならなかった。 アリスティアの処刑後。 ルブリスは毎夜悪夢にうなされた。 それは段々とひどくなり、悪夢に驚き飛び起きるなんて事もすでに何日も続いている。 ルブリスは皇帝の唯一の血縁者として生まれ大切にされた。 周囲もそんな彼の身の安全を第一にと考えた。 手厚く守られるルブリスにとって腹部を刺されるなんてことは経験したこともない。 悪意を向けられることも本気の殺意を向けられることもなかったルブリスにとってアリスティアの殺害未遂は体以上に心に傷を残してしまう。 その傷は後々まで続く皇帝崩壊までルブリスの心と体を傷つけ続けることになる事を今の彼は予想にもしていない。 ただ今は愛する女の腕の中に身をゆだねるのみ。
次の閲覧ありがとうございます。 今回は漫画『捨てられた皇妃』を4話まで読んだ感想です。 特に主人公ティアから皇后の座を奪った美優についての感想なので、厳しい意見を含みます。 読んでいてイライラする場面も多い漫画ですが、絵が綺麗 しかもフルカラー! でかなり面白いので是非読んでみてほしいです。 では恒例の。 〈諸注意〉 ・創作ではなく感想です。 ・途中まで読んでの感想なので、今後内容が変わる可能性があります。 ・ご意見、ご感想は歓迎ですが誹謗中傷であると判断した場合はコメントの削除も検討します。 ・アンケートつけました。 [chapter:諸注意] ・これは漫画『捨てられた皇妃』を4話まで読んで書いたものです。 今後の展開によって内容が変わる可能性があります。 ・美優ちゃんについて厳しめな内容となっています。 ・キャラクター批判を主な内容とするため、苦手な方はブラウザバックをお願いします。 それが元の世界にあまりいない銀髪の可愛い子なら尚更。 ほかに頼れる相手がいないから嫌われる可能性があることはできない。 「すぐにはできない」ことは仕方ないし英才教育を受けてきたティアが補佐するのも自然な流れ。 ティアを思って皇帝を拒んでたっていうのが本当なら余計に混乱するはず。 ティアが生まれた時から次期皇后として育てられたことを聞いてるのにその意味を考えもしていない。 第一志望に落ちた子に向かって受かった子が「あんな学校受かってもねー」とか言うくらい無神経。 本来自分がするべきことをできないから代わってもらってるんだということがわかっていなさそう。 さらに、ティアと皇帝の距離が縮まると感情的に文句を言ったりして皇后が皇妃に取る態度としておかしい。 いくら覚悟もなく消去法で皇后になったからって作法の一つも覚える気がないのはさすがに無責任。 元JKの感覚でそう思うことは普通だけどそれをティアに言うという選択が最悪。 全体的に、美優はあまりにも無神経で無責任であるという印象です。 もちろんティアとの比較で強調されてしまう部分もあるのでしょうが、「異世界から来たから」で擁護できる範囲を超えているように思いました。 今後どんな事件が起きてどんな一面を見せてくれるのか楽しみです。
次の3人は皇妃候補として不適格、2人はそれぞれの事情で辞退した。 またそこに皇帝も現れ、ゼナ公爵の財貨がイット国に流れていたことを指摘。 皇帝に釘を刺されたゼナ公爵は引き下がる。 その後皇帝はアリスティアに、王女たちを招聘したのはルブリスの判断だ、結果多くのものを得たと話す。 皇妃候補に一番ふさわしいプリンシアすら選ばないルブリスの思惑について、よく考えてみるよう言われる。 その後、ティアラとドレスと靴が全てセットになっていることに気づくアリスティア。 ルブリスが現れたので彼に聞くと、彼が予め用意したのだそうだ。 そして、君の決意を考え直して欲しいと、彼は言うのだった。 詳しくはにてまとめてあります 漫画「捨てられた皇妃」最新話98話のネタバレ ルブリスの気持ちを聞き、今目の前にいるこの人は過去の私が知る人と同じ人なのだろうかと思うアリスティア。 私に何かお願いしたり、気持ちや考えを尋ねたり、私に手を差し伸べる彼は、本当に私が知っている彼なのだろうか。 彼女が現れれば捨てられてしまうのにと、彼女は戸惑う。 ルブリスはアリスティアに、君は僕を見る時いつも誰かと比較しているようだ、その対象が彼らなのか、他の誰かかは知らないが、僕自身を見てくれないだろうかと言う。 君が今まで見てきた僕の本当の姿だけを知って欲しいと言い、彼はその場を離れる。 彼の言うことは間違ってはいない、確かに今まで過去の彼と照らし合わせてみてきた。 でも何のために、どうしてなのだろう。 とある日、庭園で、カイシアンがプリンシアにプロポーズした。 突然のことに、カルセインやアリスティアなど第一騎士団の面々は驚く。 彼女の美しさ、優しさ、人柄、気品にとても惹かれたと言う。 ご縁が無いと思い諦めようとしたができなかった、過ごした時間は短かったかもしれないが、心からあなたを想っていますと言い、バラの花束を渡す。 プリンシアは、まだ結婚するつもりはないと答える。 周囲の人は、カイシアン撃沈に目をそらす。 カルセインは苦笑いだが、アリスティアは二人ともお似合いなのにと残念がる。 だがプリンシアはにこっと微笑むと、お付き合いもしていないのに、いきなり結婚なんてできませんと、カイシアンに言う。 先ずは恋人としてお付き合いしてからにしましょう、リンと呼んでくださいと、彼の気持ちに応える。 抱き合う二人。 たまたま通りがかったルブリスは、一週間の休暇を与えるから、王女を中間地点まで送ってさしあげるようにと、カイシアンに指示する。 今回はそれだけだが、後日ルア王国に送る使節団にカイシアンも同行させるからという。 思いが通じ合い、幸せそうな二人。 アリスティアは、私は二度とあのような純粋な恋愛をすることが無いだろう、過去と現在を比較して、絶えず相手を疑って、また捨てられると恐怖しながら疲弊するのだろうと考えていた。 気が沈んだアリスティアは、カルセインを誘いすぐ場所を変える。 暗い表情の彼女に、カルセインは手を差し出す。 噴水脇に座っていた彼女を立ち上がらせると、彼女の手を握ったまま、美しいお嬢さん俺がエスコートしますと言い、彼は微笑んだ。 急にどうしたのかと戸惑うアリスティア。 カルセインは彼女の腰に手をまわし、ダンスをする格好になる。 アリスティアが動揺するので、そう驚くなってと言い、おでこを指でつっつく。 いくら俺がカッコよくても、真に受けられると困る、とふざける彼。 からかわれて怒る彼女に、あの二人を羨ましそうに見ていたから、こういうのを望んでいたのかと思ってと、アリスティアをからかい、彼は彼女を普段通りに戻した。 そんな二人の様子を、ルブリスは遠くから見つめているのだった。 後日、アレンディスと約束した村の祭りに参加するアリスティア。 94話 皇宮内とは全然違い、催し物が多く、活気溢れた雰囲気にアリスティアは喜ぶ。 路上で演奏もしていたので、アレンディスは彼女に手を出し、一曲どうですかと誘うのだった。 漫画「捨てられた皇妃」最新話98話の感想 ルブリスはすごく顔を近づけて、彼女に思いを伝えていましたね。 そして、彼女が自分を誰かと比べて見ているのにも気づいていました。 アリスティアは、父やお腹の子、そして自分の尊厳と命まで彼に奪われてしまった過去があるので、なかなかその過去を忘れて今を生きようとはならないかと思います。 あまりにも酷すぎますからね。 ショックで意識を失ったこともありました。 その過去を全部水に流し、もう全くの別人だと思い直して、彼を受け入れることはできるのでしょうか。 美優が現れたら、また全て失うかもしれないのに。 ルブリスが過去にしたことが酷すぎて、しかもアレンディスへの手紙を盗み見て彼も罪の内容を知っているというのに、彼が積極的にアリスティアに迫るのはちょっと図々しいと思ってしまいます。 それでも今と過去は全く違うからと割り切れるのだとしたら、アリスティアの精神は相当強いのでしょう。 話は変わりますが、カイシアンの恋が実って良かったです。 失恋ラス兄弟になるかと思ってましたが、長男は無事婚約者をゲットしました。 ラス一族の未来は明るいですね。 これで帝国とルア王国の同盟がより強いものになりそうです。 さて、アレンディスとお出かけしたアリスティアですが、服装が普段と違い可愛かったですね。 今度はアレンディスに手を差し伸べられました。 ここでもまた、アレンディスといい雰囲気になって、ルブリスをやきもきさせるのでしょうか。 次回のエピソードは それではここまで読んで下さってありがとうございました また次回もお楽しみに.
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